直木賞作品、海さん推薦「空中ブランコ」(奥田英朗著)を読んで
奥田氏は1959年生まれ、2004年に本書で直木賞を受賞。
著者45歳頃の作品になる。
主人公は、伊良部総合病院の経営者の息子で医学博士、そこで精神科医として勤務する伊良部一郎である。何不自由無く育ったため?か、自由奔放で永遠の少年(ピーターパン症候群ではないだろうか!?)、ポルシェに乗っているのはかっこ良く聞こえるが、(医療機器業者の)接待好きで、キャバクラ好きで、注射好きの風船みたいにおデブの医師である。
それでも自由奔放であるがゆえに、いつも本音のため、患者との距離が近くなることが功を奏し、それぞれの患者たちの悩みを解決に導いていく短編集になる。
・空中ブランコ:飛ぶことのできなくなったフライヤー山下公平が患者になる
・ハリネズミ:やくざの若頭なのに突端恐怖症となった猪野誠司が患者になる。ブランケット症候群のやくざも出てくる
・義父のヅラ:破壊衝動(義父のヅラを取っちゃいたい)に駆られる同級生の医師池山達郎が患者になる
・ホットコーナー:イップスでノーコンになったプロ野球選手(三塁手)の坂東真一が患者になる
・女流作家:心因性嘔吐症になった作家星山愛子が患者になる
すべてに、自分と比較してしまう相手がいたり、過去の大きな挫折や後悔が精神科に罹る原因となるようである。
伊良部医師はとんでもハップンな人だが、逆にそこに訪れてくる患者が日々よくなっていき、人としても成長を遂げていくのが面白いのだと思いました!
本の登場人物に感情移入するよりも、眺めて読む感じがちょうど良くて、きっとテレビドラマ等の視覚で伝えるのに向くのだろうナ、と感じましたヨ!
そう思ったらすでにテレビドラマにもなっていたんデスネ~!
最後に「女流作家」より『人間の宝物は言葉だ。一瞬にして人を立ち直らせてくれるのが、言葉だ。その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。神様に感謝しよう。』
これは、奥田氏の本音かもしれませんネ!
ありがとうございました~! m(_ _)m
« QC7つ道具、新QC7つ道具を利用してみよう! | トップページ | 「認知症の取扱説明書」(平松類著)を読んで »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 瀬戸内寂聴さん(1922年5月15日~2021年11月9日、享年99歳)が51歳で得度される前年に出版、40歳から50歳までに書きためられたエッセイ「ひとりでも生きられる」を読んで(2025.03.16)
- 瀬戸内寂聴さん、70歳のときのエッセイ「孤独を生ききる」を読んで(2025.02.01)
- 瀬尾まいこ氏の著書は「あと少し、もう少し」、「図書館の神様」に続く、約6年ぶりの3冊目、2019年の本屋大賞にも選ばれた「そして、バトンは渡された」を、試験後の癒しとして読んでみました~!(2024.12.21)
- 岩波文庫「読書のすすめ」第14集、岩波文庫編集部編。非売品。最近、読書量が減っているので、薄いけど面白そうでしたので、古本屋さんで200円でしたので、買って読んでみました!うん、面白かった!!(笑)(2024.12.01)
- 新型コロナ禍の2020年6月から2021年6月末まで、朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載された、小池真理子著「月夜の森の梟」が文庫化されたので、一気に読んでみた~!(2024.02.16)
« QC7つ道具、新QC7つ道具を利用してみよう! | トップページ | 「認知症の取扱説明書」(平松類著)を読んで »
コメント