「塩狩峠」(三浦綾子氏、著)最初に読んだのは23歳のとき、主人公永野信夫氏の生きた世代であったわけで、当時はこんな人間になりたいと共感したのかもしれませんが、あれから35年!(永野信夫氏は32歳で亡くなられているので、それよりも長~い!)に再読、おも~く感じましたヨ!
三浦綾子氏44歳から46歳(昭和41年(1966年)~昭和43年(1968年))のときにキリスト教誌「信徒の友」に連載された「塩狩峠」
何故重く感じたのか・・・
永野信夫氏の天命より、25年以上長く生きていても、永野氏のようには生きられていない、ということかもしれません。
永野氏は、自分の命を犠牲にして、塩狩峠で逆走を始めた列車を自らのからだで下敷きとなって受け止め、逆走列車に乗っていた人たち全員を助けた。
23歳の初読のときは、こんな大人になりたいと、共感したのかもしれませんが、
もし今の自分が塩狩峠で同じ場面に居合わせたとき、同じ行動ができるのか?
おそらく自分の命を犠牲にする行動はできないのではないかと・・・
本の中では、キリスト教の路傍伝道師、伊木一馬氏、三浦さんの声とも言われているそうですが、次のことを語られています。
「みなさん、愛とは、自分の最も大事なものを人にやってしまうことであります。最も大事なものとは何でありますか。それは“命”ではありませんか。このイエス・キリストは、自分の命を我々に下さったのであります。彼は決して罪を犯さなかった。人々は自分が悪いことをしながら、自分は悪くないという者でありますのに、何一つ悪いことをしなかったイエス・キリストは、この世のすべての罪を背負って、十字架にかけられたのです。彼は、自分は悪くないと言って逃げることはできたはずであります。しかし彼はそれをしなかった。悪くない者が、悪い者の罪を背負う。悪い者が悪くないと言って逃げる。ここにハッキリと、神の子の姿と、罪人の姿があるのであります。そして、十字架にかけられた時、イエス・キリストは、おのれを十字架につけた者のために、祈ったのです。“父よ、彼らを赦し給え、そのなす所を知らざればなり”(汝の敵を愛せよ)と」
自らの命を捨てて、人間の罪のために、永遠の犠牲になったイエス・キリスト。
人がその友のために、自分の命を捨てること、これよりも大きな「愛」は無いと・・・
この物語の所々ででてくる、聖書にも書かれている、
『義人なし、一人だになし』
人はみんな、神様の前に決してただしくはない、と。
自分を偉いと思う人間に、偉い人はいない。人よりも偉いものであるかのように思い上がることである。
姦淫するなかれと云えることあるを汝等きけり。されど我は汝らに告ぐ、すべて色情を懐きて女を見るものは、既に心のうち姦淫したるなり。
『義人なし、一人だになし』
自分も義人ではないと思えると、中高年の自分に慰めにもなりました。
永野氏と親友吉川氏との会話
「永野君、おれはねえ、いまは鉄道屋で一生を終わるつもりでいるよ。ふじ子(妹)をいい男と健康させて、おれもおれにちょうど似合った女と結婚して、子どもの五、六人も育てて、おふくろを、ああ生きていてよかったなと思わせる程度には親孝行もして、まあそんなところが、おれの身に合った暮らしというもんじゃないかと思っているんだ。」
吉川という人間が、いかにも“偉大なる平凡”というにふさわしい人間に思われた。
~~~余談~~~
主人公永野信夫の父親、祖母共に「脳溢血」で亡くなられていますが、明治時代において、脳溢血、肺炎、結核、あと胃腸炎で亡くなられることが多かったようですね。
とくに「脳溢血」は、勝海舟もそうでしたが、高血圧に起因していますよね・・・
重かったけど、よかったです!ありがとうございました~!!
m(_ _)m
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