2015刊行、五木寛之氏83歳のときの作品で原題は「嫌老社会を超えて」、それを大幅に加筆し再構成しなおして2017年に「孤独のすすめ(人生後半の生き方)」として書き下ろした本書。“孤独”に魅かれて読んでみました!
人には「食欲」や「性欲」と同じように「生存欲」という人間の持つ根源的な欲求。いくつになっても生きていたいと本能的に思う。
私自身にもその本能はあります。同時に、その本能の背後にどんなものが潜んでいるのかを繰り返し考えてみて、ふと、こんな結論を得ました。
笑われるのを承知で言えば、私は「この世界がどう変わっていくのか、観ていたい」だけなのです。
日本だけではなく、アジアが、世界全体が、この先どのような変貌を遂げていくのかを目撃したい。知りたい。そのために長生きしたいと思う。
私はあと5年、できれば10年は長生きをしてこの国の未来が観たい。「起て、老いたるものよ」と自分を奮い立たせながら、この国の行方をしっかりと見守っていこうと思っているのです。
90歳まで生き、宗教家の中では最高齢者と言える親鸞は、85歳の頃に書いた手紙の中で、
もう自分は目も見えない、なにごともすぐ忘れてしまう。人様に教えを説くような身ではないと、自分の状況を正直に見据えているのです。
あれほど頭脳明晰で天才的な思想家であった親鸞でさえ、やはり晩年は衰えていく。その現実を、自分で明らかに究めているわけです。
親鸞はくっきりとした美しい字を書く人でした。しかし晩年の手紙は文字も乱れ、判読しにくい部分もあります。どれだけ社会的に活躍した人であれ、立派な思想家、宗教家であれ、老いるとそうなっていく。それはある意味、自然の摂理です。
人間に必ず訪れる老い、その現状を明らかに究めて、受け入れる。受け入れた上で、視点を転換して、そこに新しい展開を模索する。それが、大事なのではないか。
豊かな国に拡がる不安
会社でリストラに遭ったとか、病気になったとか、「切実で現実的な」不安に駆られている人も、少なくはないでしょう。でも、それとはちょっと次元の違う、漠然とだけれど、しかし「巨大な不安」に、国全体が覆われているように思えるのです。
日本人は、誰もが漠たる「巨大な不安」を抱えていきています。その不安と面と向かって対峙したのでは、身が持たないかもしれません。「年金も保険もない老後など、想像できない」というより、「したくない」のです。
みんながするべき心配から意識的に目をそらし、お気楽に日々を送る日本の現実を、私は「心配停止」社会と名付けました。「心肺停止」をもじった、下手な造語です。
この国が、本物の「心肺停止」になる前に、なにかやるべきことはないのでしょうか。
「嫌老社会」から「賢老社会」へ
50歳になったら、それまでの働き詰めの人生を一度振り返り、「よりよい生き方とは何なのか」を考えてみよう。50歳を過ぎて、人生の後半に入ったら、好きな趣味の世界に没頭しれいればいい、ということではないのです。
「よりよい生き方」の最たるものは、「社会貢献」であるはずです。働くことに生きがいを感じられるのなら、年齢制限なく、そうすべきです。
できるだけ社会保障のお世話にならない覚悟で生きていく。百歳過ぎたら選挙権は悠然と下の世代に譲り、政は彼らに任せる。
人間不信と自己嫌悪は、人が明るく生きていく上で大きな傷害になります。それを、どういうふうに手放すか。私は、回想の力によって乗り越えられると考えています。
世の中は金と欲と権力の巷だということは分かっているけれど、それでもなお、人間は面白い。ささやかな人の営みというのは、なんともいえない味わいがある。そんなジワーっとした思いによって、人間不信と自己嫌悪という二つの病が癒されていくようにしたい
読書とは、著者と1対1で対話するような行為です。
からだが衰えて外出ができなくなっても、誰にも邪魔されず、古今東西のあらゆる人と対話ができる。
本は際限なく存在しますから、孤独な生活の中で、これほど心強い友はありません。
例え親鸞のように視力がおとろえて、本を読む力が失われたとしても、回想する力は残っているはずです。
残された記憶をもとに空想の翼を羽ばたかせたら、脳内に無量無辺(仏教のことば。「無量」は、計れないほど多いこと。「無辺」は、広々として果てしないこと。数限りないこと。)の世界が広がっていく。誰にも邪魔されない、ひとりだけの広大な王国です。孤独であればあるほど、むしろこの王国は領土を広げ、豊かで自由な風景を見せてくれる。
歳を重ねるごとに孤独に強くなり、孤独の素晴らしさを知る。孤立を恐れず、孤独を楽しむのは、人生後半期のすごく充実した生き方の一つだと思うのです。
ありがとうございました!
m(_ _)m
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