まだまだ続く!?今年18本目!以前、原作者水木しげる氏の戦争体験の話はとても学びになったこと、そして本映画は評判がよかったので『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』鑑賞~! でも、ちょっとよく分からなかったため、鑑賞された皆さまの感想も踏まえながら整理してみました~!
戦中から戦後への視座
『ゲゲゲの謎』には単なるファンタジーにとどまらない、戦中から戦後の日本に対する視座がある。
水木の従軍経験は、原作者・水木しげるが自らの壮絶な戦争体験を描いた「総員玉砕せよ!」を元にしたものだ。
無意味な犠牲を強いる玉砕命令と自分だけ逃げようとする上官、無駄死にしていく戦友たち。
『ゲゲゲの謎』でも人間を人間として扱わない日本軍の非道ぶりが克明に描かれている。
そして、その構造は戦後も変わっていなかった。
映画の中では、おぞましいほどの家父長制が敷かれた龍賀家では女性や子どもが家長に搾取されていたが、それは特別なことではなかった。
龍賀家は近現代の日本のニーズに応えて力をつけた一族であり、日本そのものが弱者を踏みつけて搾取した果てに繁栄を築いていたことが物語の中で示されている。
血の色に染まった巨大な桜の木は見事なメタファー(隠喩)だ。
権力志向で出世への野心を隠さない水木は、タバコを欠かさないスーツ姿のサラリーマン。
一方、ひょうひょうとした雰囲気をまとう鬼太郎の父は、温泉を愛する幽霊族の末裔。
そんな正反対の二人がお互いの目的のために手を組むことになる。吸いかけのタバコを回して吸ったりするなど、バディならではの表現も用意されているのが心憎い。
立場も出自もまったく異なる二人の大きな共通点は、心に大きな傷を負っていることだ。水木は戦時中に理不尽な玉砕命令を受けながら生き残った経験があり、いつも悪夢にうなされている。鬼太郎の父は妻を含む幽霊族の同胞が人間に狩り尽くされたことで、人間相手に心を閉ざしている。いわば弱さを抱えた二人が友情を芽生えさせながら、強者が隠し通そうとする真実に迫っていく。だからこそ魅力的なバディになったのだろう。
水木は物語の冒頭、列車の中で咳き込む子どもがいてもタバコを喫おうとしていた。昭和の男はそうだったといえばそれまでだが、弱い者を踏みつけにしても構わないと思うタイプの男だった。そんな男がどうやって戦中から戦後へと敷かれたレールから降りることができたのか、鬼太郎の父が生まれてくる我が子と未来についてどんなことを思っていたか、そして長く人々に愛される鬼太郎がどのように誕生したのか。そんなところも『鬼太郎誕生』が持つ魅力だと言えるだろう。
ラスボスが吐き気を催すほどのクソ野郎ですが、そちらの方が「人間」で、まともに見える方が「幽霊」という構図。
原作者の過酷な戦争体験や利権社会へのアンチテーゼを絡めてから、将来への(かすかな)希望を持たせた『鬼太郎の誕生』へ
ありがとうございました~!
m(_ _)m
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